プロペシア vs ザガーロ 本当に髪は生えるのか
目次
今回は、AGA治療薬「プロペシア」と「ザガーロ」について解説します。
プロペシアとザガーロとは
はじめに、AGAというのは男性型脱毛症のことで、男性の薄毛の原因では1番多いと言われています。
最近は、特に若い男性のAGA・薄毛に関しての関心が高まっているようです。
このAGAに関しては、治療方法として、飲み薬・塗り薬・注射薬・ウィッグ・植毛など様々な選択肢があります。
今回は、治療の基本になってくる『飲み薬の治療』のうち、「プロペシア」と「ザガーロ」について詳しく解説したいと思います。
まず、名前についてですが、プロペシアとザガーロというのは、メーカーさんが出している『商品名』になります。
それぞれの薬には「フィナステリド」と「デュタステリド」というAGAの治療に効果的な成分が含まれています。
このフィナステリドとデュタステリドという成分を含んだ薬を作って、製薬メーカーがプロペシアとザガーロという商品名を付けて売り出しているのです。
医薬品には『新薬特許期間』があるため、最初に薬を作った製薬メーカーは特許出願から約20年ほど市場を独占することができます。
プロペシアとザガーロは、この『新薬特許期間』が既に過ぎているので、どちらもジェネリック医薬品が発売されています。
ジェネリック医薬品の方が価格が安いというメリットがありますが、安いからと言って効果や安全性が劣るというわけではないので、先行医薬品へのこだわりがない方であれば、ジェネリック医薬品で全く問題ないと思います。
ただし、AGAの治療にフィナステリドとデュタステリドを使用する場合、保険適用にならないため、クリニックによって薬の値段に違いがあります。
個人輸入で格安で購入する方法もありますが、個人輸入の場合、日本の臨床試験では未承認の安全性が確認されていない物や、偽物が届いてしまうリスクがあります。
また、万が一、副作用による健康被害が出てしまっても、国による『医薬品副作用救済制度』が適用されません。
個人輸入の場合は、こういった問題点がいくつかあるということを知っておいていただきたいです。
厚生労働省のホームページでも個人輸入に関する注意喚起のページがあるので、気になる方は確認してみてください。
前置きが長くなってしまいましたが、この後の解説はプロペシアとザガーロに限りませんので、薬の名称はフィナステリドとデュタステリドに統一して解説していきたいと思います。
AGA治療ガイドライン
内服薬で治療する場合には、治療の第一選択薬として、フィナステリドとデュタステリドを処方することがほとんどです。
この治療方法に関しては、日本では様々な病気に対して『治療ガイドライン』というのが出ており、医師は治療ガイドラインを参照しながら病気の治療方針を立てています。
もちろん、世界中でたくさんの研究が行われ、新しいことが次々と分かってきますので、ガイドラインは基本的には数年に1回アップデートされます。
AGAにも治療ガイドラインがあり、2017年に出たものが最新版になります。
このガイドラインでは、専門家がエビデンスを以て治療薬や治療法に対して推奨度をランク付けしており、フィナステリドとデュタステリドは2017年版のガイドライン上では推奨度の1番高いAランクに位置付けられています。
これは多くの臨床試験が行われていて効果がしっかり実証されているからということになりますが、フィナステリドもデュタステリドも『システマティック・レビュー』という1番エビデンスが高い解析方法が行われており、プラセボ群という薬の成分が入っていない物を飲んでいる群に対して、どちらの薬も有意差をもって効果が得られているという結果が出ています。
日本人を対象にした臨床試験も行われており、例えば、日本人のAGA男性801人を対象にフィナステリドを投与した臨床試験において、薬を飲み始めてから5年後に写真で評価して検討したところ、なんと99.4%に効果があるというかなり高い結果になりました。推奨度Aになるのも頷ける結果です。
AGA治療の効果
フィナステリドとデュタステリドが第一選択薬であることをお伝えしましたが、イメージとしては『抜け毛を抑制するような効果』を持っていると思ってください。
『予防する段階』や『AGA初期の段階』であれば、内服薬は1種類のみで十分効果があると言えます。
ただ、もう少し『進行度が強い段階』では、もう1種類の飲み薬「ミノキシジル」を一緒に内服することもあります。
ミノキシジルは抜け毛を抑制するのではなくて『発毛を促進する効果』を持っている薬なので、フィナステリド・デュタステリドよりも積極的な治療となり効果も高いです。
ただし、日本で承認されている薬ではないため、扱っているクリニックと扱っていないクリニックがあります。
ミノキシジルについては、後日、また別の記事で解説していきたいと思います。
フィナステリドとデュタステリドは『5a-還元酵素阻害薬』という種類の薬になります。
男性ホルモンをテストステロンと言いますが、テストステロンは5a-還元酵素が作用することによって、ジヒドロテストステロンと言う強い活性を持つ男性ホルモンに変換され毛根に作用することで、毛髪の成長期を短縮し毛を抜けるような方向に持っていってしまいます。
フィナステリドとデュタステリドは5a-還元酵素を阻害してくれるので、毛を抜けさせるジヒドロテストステロンの生成を抑え、髪が抜けにくくなると言うわけです。
フィナステリドとデュタステリドの効果の違い
フィナステリドは5a-還元酵素のうち『Ⅱ型』だけに作用し、
デュタステリドは『Ⅰ型とⅡ型』の両方に作用します。
5a-還元酵素のⅠ型は全身に存在し、Ⅱ型はAGAで薄毛になりやすい前頭部・側頭部・髭などに多く存在します。
そうすると、Ⅰ型とⅡ型のどちらにも作用してくれるデュタステリドの方が効果が高そうだと感じますよ
そこでフィナステリドとデュタステリドを比較した臨床試験があります。
アジア人を含めた917人のAGA男性を対象に『フィナステリドを投与した群』『デュタステリドを投与した群』『プラセボ群』に分けて、6か月間薬を投与して結果を調べたものです。
結果はデュタステリドの方がフィナステリドに比べて、まず毛髪数が増加していました。
増加率はフィナステリドの約1.6倍位となり、かなり違いが出ています。
また毛髪の直径(太さ)もデュタステリドの方が効果があり、直径の平均値がフィナステリドの約1.5倍位太さが増加したのです。
同じ作用の薬と言ってもデュタステリドの方が効果が高いようですね。
フィナステリド・デュタステリドの治療はいつまで続ければ良いか
結論としては、薄毛が気になる限り飲み続けたほうが良いです。
なぜならば、フィナステリド・デュタステリドの治療はAGAを根本から治す治療ではなく、薬の効果で5a-還元酵素の活性を抑制しているだけなので、薬をやめると再び活性が戻り抜け毛が進行してしまうからです。
AGAは進行性の病気なので、薬をやめると、進行が止まるわけではなく、どんどんと抜け毛が進行してしまいます。
治療を続けて満足いく毛量に達したとしても、それを維持するためには薬を飲み続ける必要があるということです。
まとめ
プロペシア・ザガーロは治療の基本。
抜け毛を抑制し、早く飲み始めるほど効果が高い。
記事監修者
Dr.TOUHI CLINIC 総括院長
勇 亜衣子
いさみ あいこ東京大学卒業 長岡赤十字病院 初期研修修了
脳神経内科を専門としながら、AGA診療に携わったことをきっかけに頭皮や髪のケアの重要性に気付く。2023年、すべての頭皮や髪の悩みに寄り添うクリニック「Dr.TOUHI CLINIC」「Dr.TOUHI SALON」開院
Dr.TOUHI YouTubeチャンネル
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