目次
今回はカラー剤による皮膚トラブルまとめた論文を写真付きでご紹介します。
カラー剤によるアレルギー反応
アレルゲンに関しては、カラー剤に含まれるp-フェニレンジアミン(パラフェニレンジアミン)という物質です。
この原因物質は毛幹に浸透しやすく、髪の毛を自然に色づける特徴から、現在使用されているカラー剤の中の約7割に含まれる成分です。
アレルギーを引き起こす方の割合は少なく、大体0.1~2.3%と言われ、100人に1人いるかどうかぐらいの割合です。
このアレルギー症状は接触性皮膚炎と呼ばれ、カラーリング直後に起こるわけではなく、カラーリングした後数時間から数日後に症状として現れます。
頭皮や生え際、首筋などの洗い残しやすい場所に症状が出やすく、皮膚に薬液が残ることでアレルギーを引き起こします。
ヘアカラー後の頭皮
これはクリニックに通院されている患者様の頭皮のお写真です。
来院される数日前にセルフカラーをしたそうで、頭皮覗いてみると塗布から数日経っているにもかかわらず、黒い点々があるのがわかります。
カラー剤が何日も頭皮に残り、くっついた状態が続いているということを意味しています。
頭皮に付着している期間が長いほどアレルギー反応も起こりやすいため、しっかり洗い流すことが重要です。
論文の症例紹介
ここからは実際に接触皮膚炎を起こしてしまった患者様の症例をご紹介します。
症例1:生え際や顔周りに症状が出た女性
見た目から変わってしまい、カサカサになっていることがわかります。
症例2:顔周りと首筋辺りに症状が出た男性
この症状は苔癬化(たいせんか)と呼ばれ、皮膚が分厚く硬くなる症状です。
ステロイドなどを集中的に使用することで治りますが、治療に時間かかります。
症例3:水疱形成などが出た重い症状
水膨れ(水疱)ができ、場所によっては浸出液と呼ばれる汁が滲み出るなど重症です。
かさぶた(痂皮化)の状態も見られ、なかなかひどい状態ですが、このような症状が出る方もいらっしゃるということです。
■塗布した場所から離れた箇所に症状が出るケース
1/3ぐらいの確率で手足や体幹などの離れた場所に症状が出ると言われております。
その理由としては皮膚から有害物質が浸透し、全身に行き渡ってしまうためです。
・腕の症状が出た男性
・背中に症状がでた女性
・美容師の手
こちらは美容師の手の写真になります。
手を使ってカラーリングするため接触性皮膚炎が出てしまう方がいます。
長時間湿潤環境で作業することから、皮膚のバリア機能が低下してしまうことが原因です。
そのため、p-フェニレンジアミンがアレルゲンとして皮膚から浸透しやすい状況となり、ヘアカラーを受けるお客様よりも美容師さんの方がダメージの蓄積・皮膚炎リスクも高い傾向にあります。
カラー剤によるアナフィラキシーショック・類似した症状の症例
接触皮膚炎とは別のアレルギー反応としては、アナフィラキシーの症状があります。
これはワクチンでも最近リスクがあると言われており、アナフィラキシー症状とかそれに類似した症状として蕁麻疹や血管浮腫、起動閉塞など命に関わるような症状が出てしまうこともあります。
・目が腫れいている写真
こちらの症例は、目の周りが血管浮腫と症状を起こしパンパンに晴れ上がった状態です。
過去に何度もヘアカラーを行って大丈夫だった方も突然こういったアレルギーを起こしてしまう可能性はありますので安心はできません。
カラー剤を使用することによる皮膚への薬剤の蓄積や、その時の体の状態などでアレルギー症状が出る可能性があるのです。
・色素沈着
・色素脱失
カラー剤を慢性的に使用することにより、皮膚の色素の元となるメラノサイトを攻撃してしまう有害物質をカラー剤が作り出し、写真のような皮膚の色素沈着や、逆に白抜けしてしまう色素脱失の症状を起こしてしまうことも。
カラー剤によるダメージを減らすために
事前にパッチテストすることですが、今染めたいのにパッチテストをして1週間後に来てくださいという美容院は現実的ではないため、難いのが現状です。
カラー剤の毒性は農薬の140倍と言われ、ガンのリスクを高める恐れもあると言われています。
髪へのダメージ・抜け毛・薄毛症状の原因であると同時に、フケ・乾燥の原因となり、実際にカラー剤でかさぶたができる方もいらっしゃるため、
美容室で現実的にできる対策としては以下のようなオーダーをすることだと思います。
・頭皮につけないよう塗布する
・塗布後の時間を短くする
・頭皮に残らないようにしっかりと濯ぐ
・生え際、首周りをワセリンなどで保護する
・ヘアカラーの頻度を減らす
頭皮の負担を減らすカラーの方法についてはこちらの動画でも解説をしていますので、併せてご覧下さい。
白髪染めは人体に悪影響!?~人体への負担を減らす方法とは~
気になるという方は、美容院で使用しているカラー剤に含まれるアレルギーの原因物質の割合を確認してください。
p-フェニレンジアミンの濃度は、国によって許容される最大濃度の取り決めにバラつきがあり、6%と言うところもあれば10%まで許容される国もあります。
いずれにしろ濃度が低いに越したことはないので、大体の目安である6%~10%が上限であることを知った上で、この美容院ではどのくらいの濃度のものを使用しているか確認することをおすすめします。
今後の展望
p-フェニレンジアミンと類似した誘導体として「2-メトキシ-5-メチル-p-フェニレンジアミン」という物質があり、これがアレルギーを引き起こしにくいかつカラー剤として活用できるということがわかってきました。
p-フェニレンジアミンの代用として研究がすすめられ、割と安全性が高いことも分かってきていますので、今後こちらを使用したカラー剤を取り扱う美容院が増えてくる可能性があります。
まとめ
カラー剤が引き起こすアレルギーや皮膚のトラブルを接触性皮膚炎と呼ぶ。
カラー剤は毒性が非常に高いと言われており、アレルギー以外にも薄毛や発がんリスクも潜んでいるため、なるべくカラー剤への接触を減らすなどの対策を取ることが大切です。
記事監修者
Dr.TOUHI CLINIC 総括院長
勇 亜衣子
いさみ あいこ東京大学卒業 長岡赤十字病院 初期研修修了
脳神経内科を専門としながら、AGA診療に携わったことをきっかけに頭皮や髪のケアの重要性に気付く。2023年、すべての頭皮や髪の悩みに寄り添うクリニック「Dr.TOUHI CLINIC」「Dr.TOUHI SALON」開院
Dr.TOUHI YouTubeチャンネル
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頭皮のベテラン経験則を持つ元美容師と、東大卒の医師が皆さんの髪の悩みを解決します。