未承認のミノキシジルの内服薬は使っても大丈夫!
目次
「未承認なのにミノキシジルの内服薬は飲んでも大丈夫なの?」
当クリニックの患者様からもYouTubeのコメント欄でも良く頂くご質問ですので、今回はこちらについて詳しく解説していきたいと思います。
ミノキシジルは内服して大丈夫なのか
ミノキシジルの外用薬は発毛を促進するお薬として有名なので、ご存じの方も多いと思います。
日本皮膚科学会が定めるAGA治療ガイドライン(※男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)でも、治療の推奨度ランクは最高の「A」と使用を強く推奨しています。
一方、ミノキシジルの内服薬については日本でも世界でも未承認で、推奨度ランクは最低の「D」に位置付けられ、行うべきではないとされています。
推奨度がDランクの理由
ガイドラインに推奨度の決定基準についてこのような記載があります。
本文中の推奨度が必ずしも上記の判断基準に一致しないものがある。
その理由は、この分野では国際的にもエビデンスが不足している状況、日本の歴史的背景や特殊事情、さらに診療ガイドラインの実用性も考慮して、委員会のコンセンサスに基づき推奨度を決定した項目があるからである。
医薬品は世に出回る前に必ず臨床研究を行い、効果・副作用等の安全性がしっかり確認されてはじめて商品化されます。
元々ミノキシジルは高血圧の治療薬として承認を得ているため、もう何十年も前に安全性に関しての臨床試験は終わっているのですが、用途の違う薄毛治療としての使い方に関しては、まだ安全性が確認されていませんよね?という事のようです。
AGA・女性型のFAGA共に使用しないように強く勧められるとはっきり記載があり、利益と危険性が十分に検証されていないため、エビデンスが不足しているから国としては認めていませんという見解です。
エビデンスに求められる条件
高血圧薬での服用実績はあり安全だと認められていても、国のガイドラインなので、リスクを犯せないことからAGA治療薬としてはまだ未承認なのです。
ただし未承認薬であっても、医師がこの患者さんには使用した方が良いと判断し、輸入などでミノキシジルを患者に処方すること自体に違法性はなく、未承認薬であってもそういう手順を踏むことで、合法的に使用することは可能です。
このように未承認であるというだけで、クリニック等で個別に処方されたケース、お勧めはできませんが個人輸入で服用されたケースを含めると膨大な症例があるはずですが、個別のクリニック単位で行う何百という症例規模では学会で発表するには十分ではなく、安全であるという実績はあってもエビデンスレベルとしては弱いということです。
今後、世界的に数千人単位の大規模な研究が行われるか、有名な雑誌に載るなどエビデンスがあれば日本でも承認される日が来ると思います。
ミノキシジルの安全性
安全性として1番懸念されている点は、高血圧の治療として使われる薬であるため、
・血圧を下げてしまうのでは?
・むくみやすくなる?
・心臓の機能が落ちてしまうのでは?
といった心臓血管系の副作用が健康被害に繋がるのではないかという点ですが、これについては、心配はいらないと思っています。
なぜなら、高血圧の治療に使用される量というのは最低でも10mg~40mgであるのに対し、AGAの治療には症状に応じて5mgくらいのものを処方されることが多いです。
もっと少ない方だと1.25 mg~2.5mgと高血圧治療で処方されるよりもかなり少ない量で処方されるため、基本的には血圧などに影響を与える量ではないと考えてもらって良いと思います。
用量を増やすのは効果的なのか
用量を増やすと薄毛の効果がより高くなるのか2.5mgと5mgを比べた論文はありますが、5mgと10mgで比べるとどうなるかというのも未だはっきりとしたエビデンスがなく、血圧の治療として使われる量の10mg ~40mgを服用したらより生えるのか?というと、そこもまだエビデンスがないのが現状です。
ただ単純に量増やしたら効きそうだなと感じるかもしれませんが、毛髪を増やすために健康を害しては本末転倒ですので、ご自身の判断で安易に服用する量を増やすことはお控えください。
ミノキシジルを服用する時の注意点
医師に処方された薬ではなく個人輸入の薬を服用することはおすすめできません。
当クリニックへ相談に来られる患者様にも、過去に個人輸入薬を使用していたと言われる方はいらっしゃいます。
中にはご自身が今一体何㎎を服用しているのかご存じでない方も。
個人輸入したその薬は、本当に安全な成分だけで作られた信頼できるものなのでしょうか?
万が一、有害な成分が含まれていたことに気付かず服用し、その有害な成分が健康被害を引き起こしてしまったとしたら・・・?
可能性は十分にあると思います。
その場合、表向きはミノキシジルで被害が起きたように見えてしまい、副作用や重篤な症状で治療が必要な場合に医師が治療の判断を誤る可能性もあります。
それをふまえても、やはり薬は医師の指導の元に飲んでいただくのが1番安全だと思います。
多毛症
ミノキシジルの副作用として多毛を気にされる方も多いと思います。
脱毛していたヒゲや産毛が濃くなったなど、ご経験のある方もいるようです。
ただこれに関しては毛にしっかりと薬の効果が表れている証拠であり、健康被害ではなく見た目の問題と捉えられるので、毛髪は欲しいが体毛は除毛したいと矛盾が生じていますが、本当に薄毛に悩んでいて頭髪を優先したい方にとって多毛はむしろ喜ばしいことに感じられるかもしれません。
また、ミノキシジルにより毛が太くなったということをポジティブに考えれば、脱毛の機械が反応せず除去できなかった産毛を脱毛するチャンスとも言えます。
太くなったこのタイミングでもう1回脱毛すると、ムダ毛がきれいに無くなりツルツルになります。
まとめ
実績のある薬であるにもかかわらず未承認薬である理由、ガイドラインでの推奨度が低い理由は、薬自体が危険というわけではなく、AGA治療薬としてのエビデンスがまだ十分ではないと判断されているからです。
臨床経験上は重篤な副作用が出た方もいらっしゃいませんので、医師の監督下で内服していただければ長く続けていただける薬だと思います。
記事監修者
Dr.TOUHI CLINIC 総括院長
勇 亜衣子
いさみ あいこ東京大学卒業 長岡赤十字病院 初期研修修了
脳神経内科を専門としながら、AGA診療に携わったことをきっかけに頭皮や髪のケアの重要性に気付く。2023年、すべての頭皮や髪の悩みに寄り添うクリニック「Dr.TOUHI CLINIC」「Dr.TOUHI SALON」開院
Dr.TOUHI YouTubeチャンネル
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