縮毛矯正剤でガンのリスクが○○倍!?エビデンスを元に解説
目次
縮毛矯正やカラー剤ががんの原因になるのかについて解説させていただきます。
縮毛矯正やカラー剤やパーマ剤が、がんのリスクになるとかならないかという議論は以前からされてきました。
そして2022年に縮毛矯正剤・カラー剤と子宮体がんとの関連について初めて報告した論文が出ました。
また、その直後に縮毛矯正と子宮体がんに関する訴訟が起こりさらに話題になりました。
子宮体がん訴訟内容
10歳の頃から縮毛矯正を繰り返していた32歳の女性が2018年に子宮体がんと診断され子宮を摘出する手術を受けました。
その子宮体がんになった原因が縮毛矯正にあるのではないかということで患者さんがロレアルを訴えたという内容です。
まだ最近の裁判のため、決着はついていません。
しかし、カラーや縮毛矯正など普段から美容院で誰でもやるような身近な施術ががんにつながる可能性があるということはちょっと怖い話ではありますよね。
カラー剤や縮毛矯正はガンにつながるのか?
本当にがんのリスクになるのかどうかという点についてエビデンスを基にご紹介していきます。
女性特有の3つの癌について解説します。
子宮体がん・卵巣がん・乳がんとの関連について順番にお話ししていきます。
【基本的な知識】
子宮がんは大きく二つに分かれています。
・子宮頸がん
・子宮体がん
※カラー剤や縮毛矯正剤と関連性があるといわれているのが子宮体がんとなります。
また、がん以外にも縮毛矯正にはリスクがございます。
別の記事で詳しく解説しておりますので、是非ご覧ください。
縮毛矯正と子宮体がんとの関連性
訴訟の根拠となった論文(※Chang CJ, et al. J Natl Cancer Inst 2022;114:1636-1645)
2022年去年の12月に発表された論文です。
■研究内容
・35歳~74歳の女性33,947名を対象
ヘアケア関連の製品パーマ剤やカラー剤の使用歴と子宮体がんとの関連性について質問表を使って調査したような研究です。
■結果
約11年間にわたる調査の中で結果的に378例の方が子宮体がんと診断されました。
この結果を受けて過去1年間の間に縮毛矯正剤の使用歴があった症例と使用歴がない症例に比べて、子宮体がんのリスクが1.8倍になるということが分かりました。
さらに年間で4回以上の使用をした場合、子宮体がんのリスクはもっと高くなり2.55倍という結果になっています。
しかし、一方でこの研究では縮毛矯正剤以外のカラー剤やパーマ剤に関しては子宮体がんとの関連はなかったと結論づけられています。
■子宮体がんのリスク
黒人女性がよりリスクが高くなる傾向があるとも言及されていますので一概に私たち日本人に当てはめていい話ではないかもしれません。
さらに言うと年に4回以上の縮毛矯正を行う場合リスクが2倍以上とされていますが実際に罹患する割合を数字で見てみると4%程度です。
その為、そこまで高くない数字ではあるかなという感じにはなります。
また縮毛矯正剤を使用した場合というくくりで調査を行っていますが、実際には自宅で市販の製剤を使用した場合とサロンテ施術した場合というのが混在して含まれてしまっているため他の要因が関与しているという可能性も否定できません。
がんのリスクになりうる物質は、頭皮からの吸収だったりとかあと呼吸で吸い込んでしまうというのが侵入経路と考えられています。
美容師さんになるべく頭皮につけないように施術したり、有害物質を吸い込んでしまわないように換気の良い場所で施術を行うことで少しでもリスクを減らせるかもしれません。
縮毛矯正と卵巣がんとの関連性
卵巣がんに関しても調査されている論文は結構少ないのですが2021年に卵巣がんとの関連性が発表された論文を紹介いたします。
※White AJ, et al. Carcinogenesis 2021;42:1189-1195
■研究内容
・35歳~74歳の女性で40,559名が対象になっています。
過去1年間のパーマ剤またはカラー剤または縮毛矯正剤の使用歴と卵巣がんとの関連性についてこちらも質問表で調査した研究データです。
■結果
縮毛矯正剤を年に4回以上使用した場合には卵巣がんのリスクが約2.2倍に増加します。
またカラー剤の使用歴がある場合には一部の卵巣がんのリスクが1.94倍に増加するという結果が得られました。
卵巣がんとの関連についてもまだまだ論文が少ない状態なので今後もう少し臨床研究が行われてデータが蓄積していかないとはっきりしたことは言えないとは思いますが縮毛矯正やヘアカラーはやらないに越したことはないです。
縮毛矯正やヘアカラーをやる場合にも、なるべく回数を少なくした方がいいと思います。
頭皮への負担が少ない白髪染めの方法や、ヘアカラー剤が引き起こすトラブルについても解説していますので、こちらもご覧ください
縮毛矯正と乳がんとの関連性
乳がんとの関連は乳がんとの関連性については子宮体がん、卵巣がんと比べると一番研究されており、データが多いのですが結論から言うと決着がついてない状態です。
乳がんのリスクを高めると結論付けている論文もあれば、乳がんのリスクとは関係ないと結論付けている論文もあります。
2020年に出た大規模な研究を一つ紹介させていただきます。
※Eberle CE, et al. Int J Cancer 2020;147:383-391
■研究内容
・46,000人の女性を対象
縮毛矯正剤とヘアカラーの使用歴と乳がんの関連を調査した研究になります。
■結果
カラー剤に関しては過去1年で使用歴のある症例は使用していない症例に比べて9%だけリスクが高くなるという結果でした。
ところがカラー剤を使用した黒人女性だけに限定するとなんと9%どころではなく45%まで高くなるという結果になっています。
これは黒人女性に向けて販売されているカラー剤というのが有害物質を含む濃度が高いということが関係しているのではないかとこの論文では言われています。
縮毛矯正剤に関しては過去1年間で使用歴があった症例は使用歴のない症例に比べて乳がんのリスクが約18%高くなるという結果になりました。
特に1、2ヶ月に1回縮毛矯正をする場合はさらに乳がんのリスクが上昇して31%高くなるという結果になっています。
この研究に関しても個人個人が使用する製剤に含まれている成分が異なり、セルフで施術するかサロンで施術するかで違いがある可能性もあることが言及はされています。
なぜがんのリスクにつながるのか?
がんのリスクにつながる直接的な原因は結論から言うとまだできておりません。
ですが仮説として考えられているのは、体内の正常なホルモンの働きに影響を与えてしまうような内分泌かく乱物質というのがあります。
この内分泌かく乱物質がカラー剤とか縮毛矯正剤に含まれていることが原因ではないかと言われています。
子宮体がんや卵巣がんや乳がんはいずれも、エストロゲンという女性ホルモンの刺激が長期間続き、エストロゲンが過剰に分泌されるということが主な要因で発症します。
ホルモンに関連して発症するようながんなのでこの内分泌かく乱性物質によって体内のエストロゲンの量・作用が乱されることが原因ではないかと考えられています。
あとは一部の縮毛矯正剤にホルムアルデヒドというがんを誘発すると言われている物質が含まれていることが関係しているのではないかということも言われています。
いずれにしても確証が得られていることではないので今後さらに研究の必要な分野にはなってくるかと思います。
まとめ
カラー剤や縮毛矯正剤は子宮体がん・卵巣がん・乳がんなどのリスクになる可能性があります。
施術を受ける場合には頭皮になるべくつけずに、換気の良い場所で行うなどの対策を取るようにしましょう。
くせ毛については、縮毛矯正だけでは根本解決とはなりません。
髪質改善治療について詳しく解説した記事がございますので興味のある方はご覧ください。
記事監修者
Dr.TOUHI CLINIC 総括院長
勇 亜衣子
いさみ あいこ東京大学卒業 長岡赤十字病院 初期研修修了
脳神経内科を専門としながら、AGA診療に携わったことをきっかけに頭皮や髪のケアの重要性に気付く。2023年、すべての頭皮や髪の悩みに寄り添うクリニック「Dr.TOUHI CLINIC」「Dr.TOUHI SALON」開院
よく読まれている記事
Dr.TOUHI YouTubeチャンネル
わたしたちはYoutubeを通して、医学的エビデンスに基づいた髪・頭皮に対する正しい情報を発進しています。
頭皮のベテラン経験則を持つ元美容師と、東大卒の医師が皆さんの髪の悩みを解決します。